出水と太刀川さんと風間さんに挟まれる話。【ワートリ】
第3章 第3話
こちらまでくると、息を整えるため膝に手をついて俯いた。
「相変わらずルーズだね名無しさん」
「す、すみません…」
菊地原の口調からすると、駆けてきたこの人は名無しという名で、2人は顔見知りのようだ。
「まあまあ、俺たちが早く来すぎただけだよ。ほら、待ち合わせの10時半はいま丁度だぞ?」
歌川が腕時計を見せながら彼女を庇った。
「…大丈夫か、日向」
風間さんの一言で俺と太刀川さんの目の色が変わった。
風間さんの言葉に反応した彼女は、ゆっくりと顔を上げた。
昨日見たのより10倍は鮮明に見えた。
白い肌、小さな顔、パッチリとした二重まぶた、そしてそれを覆う長くカールしたまつ毛に、赤く染められた唇。
息が上がっている所為か、顔も少し赤くなっていた。
とても華奢で、腕も足も細くひょろりとしていた。
「…かわい」
ヒソッと太刀川さんのが呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
心の声が漏れてますよー、太刀川さん。
「すみませんでした、大丈夫です」
髪を整えながら彼女、「日向名無し」は3人に隊服を手渡した。
「3人分、正規品です。サイズ調節もしたので、問題ないはずです」
「助かるよ日向さん」
「…どーも」
「助かった、日向」
3人はそれぞれ日向に礼を言った。
彼女は「仕事なので」と照れ笑いしていた。
…なんて綺麗に笑うんだろう。
俺は無意識にそう思っていた。
「では、私はこれで」
彼女が身体を翻したその時、俺と太刀川さんは
「あっ!!」
と声をあげて手を伸ばした。