第2章 目覚め
松岡君に言い放たれたあと、私は頭を下げて3人から逃げるように足早に帰った。
ただいまも言わず階段を駆け上がって、ベッドに飛び込んだ。
何故か分からないけど涙が溢れて止まらなかった。
記憶を失う前から私は彼らと面識があって、私は彼らと水泳に関することを約束していた?
確か、勝負…松岡君と勝負だ。
何のために? どうして?
そうだ…SNSを見れば分かるかも。
私は携帯をバッグから取り出して、松岡凛という文字を探した。
あった。すぐに見つかった。
「大会があったからなかなか勝負できなかった。
今年の夏、俺が日本にいる最後の夏、勝負しろ。
あの日の約束忘れたわけじゃねーよな?
お前、もう一度教えてくれるんだろ?
〈見たことのない景色〉」
見たことのない景色…って…何。
私、もしかして彼らに関すること全部忘れてるのかも。
私はクローゼットの中を探り始めた。
中のもの全て取り出して、アルバムのような物がないか確認する。
しばらくすると小さい頃、よくお母さんに読んでもらっていた本が出てきた。
「人魚姫だ。懐かしい。」
よく見ると何か栞のようなものが挟まっている。
引っ張ってみるとそれは幼い頃の自分と彼らの写真だった。