第3章 新たに
「ほい、これ。特別に奢り。」
凛が自販機で買ったコーラを投げてくる。
「ちょっと!炭酸飲料投げないで!」
私が怒りながら言うと、子供みたいに悪戯っぽく白い歯を見せながら「ワリィ」と一言、適当に謝られた。
ベンチに座り、凛はコーラを一口で半分以上飲み干した。
「凛ってさ、やっぱり大人びてるよね。」
「はぁ?いきなり何言ってんだ…」
「凛ってさモテるの?」
小馬鹿にしながら私は聞いてみた。
「俺の学校、男子校だからモテるとかそんなのねぇよ。明後日にもなれば寮に戻ってまた練習だ。
お前も行くんだろ?大会。」
「大会?」
「出る筈だぞ。フリーとコンメ。
この大会で成績が良かったら大学から推薦受けるだろうから気合い入れねぇとな。」
「そうか…記憶無くす前に大会出てたんだね。」
「あぁ…すげぇ綺麗でしなやかだったぜ。お前の泳ぎ。」
凛は自分のことのように嬉しそうに言った。
夕日が沈み、街灯に明かりがつき始めた。
「そろそろ帰るか…」
凛が立ち上がり、数メートル離れたところでコーラの缶を投げた。
綺麗な放物線を描いてゴミ箱に入った缶の音が2人だけの公園に響き渡った。