第3章 新たに
「泉美波、彼女は岩鳶のマネージャーで悠と中学時代ライバル関係だったんだ。」
「悠とは全く逆の性格だな。」
真琴とハルが『泉美波』という人物について事細かに説明してくれた。
「そいつが何に関係するんだ?悠に恨みでもあるのか?」
凛が私が一番に思っていた疑問を口に出した。
「凛はオーストラリアにいたから知らないと思うけど泉さんは中学生の時、悠にフリーとコンメ負けてるんだ。それ以来、泉さんは泳ぐのをやめたんだ。」
真琴の口から出たのは思ってもいなかったことだった。
私は、泉美波という人から水泳を奪ったっていうこと…なの…?
駄目だ…私、本当に最低な人間だ。
記憶を無くす前の自分がどれほど愚かだったのか思い知らされた。
目の前が涙で歪んで見える。
「ごめん…私、帰るね。」
私はお金をテーブルに置いて店を出て行った。