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親友を取った男の部下に堕とされました

第2章 決意


小さい頃から唯一無二の親友だった俺より、会って1年も経ってないおっさんの方が大事になっちゃったのかよ。
盤石だと思っていた足元が音を立てて崩れていくような気分だった。俺にとって弥作は本当の意味でかけがえのない存在なのに、俺、俺は、
「ゆうは」
弥作の声で現実に引き戻される。どうやら俺は歩きながら危うく溝に足を入れてしまいそうになっていたらしい。
「あのねゆうは、何を怯えてるのか知らないけど、ボクが働きに行ったってボクらの仲は変わらないんだよ?これからも毎日会おう、毎日お喋りしようよ。ボクは鶴見さんの事が大好きだけど、ゆうはのことだってスッゴク大事だからね」
元気づけてくれようとしているのか、弥作は俺を抱きしめた。
でもな、きっと変わってしまうんだよ。今まで少しの距離も置いてなかった俺らが急に距離を離してしまったら、お互いがいなくても生きていける世界に気づいてしまう。お互いが唯一無二じゃなくなってしまう。俺はそれが怖いんだ、弥作。
でも俺は弥作よりお兄さんだから、俺は弥作の前ではすこし大人でいたいから、こんな依存体質を弥作にさらけ出すことはしない。出来ない。だから俺は大人ぶって、弥作に笑いかけた。
「わかった。そうだな、こんなことで俺らの仲が変わるわけないよな」
弥作はあからさまにホッとして肩の力を抜いた。
「さ、そうと決まれば残り少ない高校生活ちゃんとするぞう!…あ、学校をやめるってなると先生とかに話した方がいいのかな。どうなんだろう」
きょと、と小首を傾げる弥作に思わず笑ってしまう。
「さすがにまだ言わなくていいだろ。学校側に言うのは鶴見…じゃなくて、鶴見さんと色々話し合って、日取りとかを決めてからにしないと」
「そっか、そうだね!いつかわかんないけど近いうちに学校やめます、なんて言ったって先生たちも困っちゃうか。じゃあ今日帰ったら鶴見さんに電話して…」
なんやかんや言ってたら学校に着いた。
弥作の表情は今までにないくらい明るくて、教室に入るなりクラスメイトがちょっとざわついた。俺の前ではあんな調子の弥作だが、学校じゃ暗い人見知りで通ってるからな。

ざわつくクラスメイトたちをよそ目に、俺はポケットの中で強く拳を握った。
──鶴見、覚悟しろよ。絶対に、絶対にお前なんかに俺の親友は渡さねえぞ。
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