第20章 アングレカムの願い事
「楓、量足りてる?」
「うん、十分。ありがとう!」
夜になるとテンゾウお兄ちゃん、ナルト君、キラービー様、そしてキラービー様の側近と思われる方々と一緒に焚き火をし、その火を囲んで夜ご飯を食べた
「ナルト、任務も修行も順調かい?」
「あ…、あぁ!バッチリだってばよ!」
「だってばYO!己に勝つ必YO!
勝てば最きYO!ア!イェー!」
少し歯切れの悪い返事をするナルト君の悩みを知っているのかキラービー様がラップを歌っている
(己に勝つ必要?勝てば最強…?ナルト君は何か壁にぶつかってるのかな)
少し浮かない顔のナルト君が心配だったものの、その後はみんなが元気にその日のご飯を平らげた
「テンゾウお兄ちゃん、私少しお水が飲みたいから汲んでくるね。」
「わかったよ。気をつけてね。」
空になった水筒を持ち川へ向かうとナルト君がついてきた
「楓ちゃん、夜道は危ないってばよ。オレも一緒に行くよ。ここ、すげぇ動物多いんだ。」
「ナルト君、忙しいのにわざわざありがとう。」
川の麓につき、水筒を洗う
いつもおしゃべりなナルト君が何も話さずに横にいる。
やはり今日は少し元気がないように見えた。
「ナルト君、なんかあった?」
「えっ!?いや…別に…」
「そっか。」
キュキュッと水筒をこすり洗い、蓋を近くの岩の上に置いて水を汲む
「ナルト君ってさ、私が悩んでる時とかいつも気づいてくれるし、誰に対しても分け隔てなく元気ない時は喝を入れてくれたり、凄く優しいのに
ナルト君は私たちのことをあんまり頼ってくれないよね。」
「えっ?」
動揺したナルト君の顔が水面に反射して見える
「でも、それはきっと、ナルト君が頼れる環境にいなかったから。
ナルト君がみんなの頼りになるのは、ナルト君がずっとみんなにそうして欲しかったから。
ナルト君は、辛い気持ちもわかるからこんなに優しいんだろうね。」
水筒に水を入れ終え、蓋を閉めふりかえる
振り返って直接見るナルト君の顔はやはり動揺を隠せていなかった