第11章 徘徊×ノチ×再開
3階には左右に伸びた廊下と、いくつかの部屋のみ。
座席らしきものは無かった。
「はぁ…」
聞ける係員もいないし、仕方ない。
乗客に聞こうと思ったが恥ずかしい……「田舎者です」と公言する様なものだ。
先程みたいに恥ずかしい思いはしたくない。
自分で調べられる様にならなくては。本当に。
そういえば、あの男の人の名前を聞き忘れてしまったな。
名前を聞きそびれた事に少し後悔。
来た道を引き返そうとした時、ひとつの部屋の扉が開いた。
「……ニーナ?」
その部屋から出て来た人に名を呼ばれた。
____この声はッ!
最後に聞いたのはいつだっただろうか。
ずっと会いたかった人。
帰りを、ずっと待っていた人……
「エッダ姉様!」
「ニーナ!」
エッダ姉様は私に駆け寄ると、腕を回して力いっぱいに抱きしめてくれた。
姉様を抱きしめ返すと、その身体は少し震えていた。
「すまないッ!すまなかった……あんたはずっと、私を……待っていたのにッ」
「!」
姉様は、私が故郷で帰りを待っていたのをしっていたの?
それより驚いたのは、姉様が泣いていた事だ。
再開が嬉しくて震えているのだと思ったが、姉様は声を詰まらせながら私に謝り始めた。
「姉様が生きてて良かった。こうして再開出来て、私は嬉しいです」
エッダ姉様が泣くのを見たのは初めてで戸惑ったが、落ち着く様に背中をゆっくり摩る。
暫くすると、落ち着いて呼吸が穏やかになった。
姉様はゆっくり離れると、両肩に手を置いて私の顔を覗き込んだ。
「だいぶ背が伸びたな。前はこなに小さかったのに」
まだ少し目が充血しているが、笑顔を浮かべて自身の胸下辺りを手で示した。
エッダ姉様が村を発った時、私は姉様の胸下ぐらいまでの高さだったが、今では鎖骨辺りまで伸びた。
「私が村を出た後も、調理場へ忍び込んだりしてたか?」
「訓練が始まってからはなかなか……」
「食い意地が張ってるニーナでも、さすがにあの過酷な訓練の合間に調理場へ忍び込む事は無理だったか」
エッダ姉様は数年前と変わらない姿で笑いかけてくれた。
強いて言えば、髪が伸びたぐらい。
「私の部屋でゆっくり話さないか!」
姉様は私の手を掴んで歩き出す。
そうだ、姉様に私の席の場所を聞いておこう。