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覇者×ト×敗者

第8章 狂気×狂態×狂人


「そこまでだヒソカ!」

奴を止める。実力行使で。

「はぁアッ!」

ヒソカ目掛けて右足を振り下ろす。
後ろへ下がって避けられたが、まだ私の射程内。
身体を後ろへ倒しながら捻る。 その反動を利用して上げた左足で、腰の入った蹴りを入れる。
こめかみを狙ったが、腕でガードされてしまった。

「!?」

それより驚いたのは、彼が無傷だという事。
私達アマゾネスなら、渾身の力を込めれば硬い岩でも砕く事が出来る。
正直、殺すつもりだった。私の生命の安全が脅かされているから。
なのに、奴は顔色ひとつ変えずに私を見つめている。
無傷という予想外の出来事に反応が遅れ、左足を掴まれてしまった。

「いい蹴りだ❤︎」

「ッ!」

次の瞬間、全身にぞくぞくと不快な気配が纏わり付くのを感じた。


危険
離れろ


頭の中でそう指示されているのに身体が動かない。


怖い
動けない
殺される


今なら分かる。 ヘビに睨まれたカエルの気持ちが。
逃げたい。が、一歩でも動いたら殺られる。
冷や汗が首筋を伝う。

「怖いのかい?」

ヒソカの手が近く。


殺される!


「好き勝手しやがって!」

「調子に乗るな!」

「始末する良い機会だ」

「覚悟しろよ」

他の受験生がヒソカに対して嫌悪感を抱いているのは薄々感じていたが。
その感情を今爆発させるのは自殺行為。
このままでは皆殺しだ。
ヒソカの気を彼らから逸らさなければ。
左足はまだ掴まれているが、右足で蹴りを入れる分に支障はない。
むしろ好都合。
この状態で攻撃するとは思っていないヒソカは完全に油断している。


今だ!


今度こそ仕留める!
先程の攻撃威力には劣るが十分殺せる。
卑怯だが、ガードが間に合わないよう不意をついた攻撃。

「!?」

ドガッと響いた鈍い音。 こめかみに命中した。
これで奴は、

「な、なぜ!? なぜまだッ」


生きてるんだッ


もう攻撃する気力がない。 限界だ。
恐怖で身体の震えが止まらない。
殺せたと思ったのに奴はまだ生きている。
あの不気味な笑みを浮かべて。
もう殺す術は残っていない。

「あァ❤︎キミはやっぱりボクが思ってた通りのコだ……♦︎」

「は、離せッ」

「くっくっくっく」

奴は以外にもあっさりと私の足を解放した。
これで自由だ。
早く、早く逃げなければ。

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