第8章 狂気×狂態×狂人
殺気立っているヒソカに警戒しつつ、四次試験の開始を待つ。
「よォ!」
奥の扉から男が現れた。
無造作に後ろへ撫でつけられた髪に毛皮の上着といった格好は、いかにも野生的で男らしいと思ったが、少し品の無さが感じられる。
「四次試験担当官の……おい、貴様」
試験官は自己紹介の途中で急に不機嫌になった。
その原因は言わずもがな……
「オレにケンカを売るなんざ、いい度胸だな」
試験官はヒソカを不快そうに睨んでいる。
「くくくくっ」
しかし、そんな事を何とも思わないヒソカはさらに試験官を挑発する。
「何がおかしい!」
ごもっともな質問だ。
私も何故ヒソカがこんなにも殺気だっているのか疑問だ。
凡人には変態が何を考えているのか理解出来ない。
「ガッカリだよ。 もっと楽しめると思ったのに……残念だ♦︎」
「き、貴様ァ!」
「ヒソカ!」
ヒソカは明らかに試験官を挑発している。
止めなければ。 さっきからずっと嫌な予感がする。
この一触即発の状況をなんとかしなければ取り返しのつかない事態になる気がした。
ドクン、ドクンと耳元で響く心臓の音が、「早く逃げろ」と鳴る警鐘のように感じた。
他の受験生はヒヤヒヤしながら2人を傍観している。
「ボクが代わりに試験官を務めてあげよう❤︎」
「ふざけやがってェエーー!」
試験官は曲刀を取り出し、ヒソカ目掛けて突っ込んでいく。
ヒソカは、それは優雅な動きでトランプを取り出した。
突進してくる試験官をジッと見つめるヒソカ。
試験官が曲刀をヒソカの顔目掛けて振り下ろす。が、届く事はなかった。
「うわぁああ!」
速すぎて何が起こったのかよく分からなかったが、試験官の顔に出来た傷はヒソカのトランプが原因だろう。
手にしているトランプから血が滴り落ちている。
額から頬までザックリ切られてもがいている試験官を、ヒソカは恍惚とした表情で見下ろしている。
正気じゃない。
このままでは試験官は殺される。
「いい加減にして!」
私の言葉に耳を傾ける事なく試験官へと近づいていく。
近づくヒソカを前になんとか立ち上がっているが、ヒソカは笑みを浮かべたまま腕を上げ、スッと一直線に振り下ろした。
「あぁアアあァあッ!!」
顔の左側同様に、今度は右側を裂いた。
試験官は武器を放り投げ、顔を両手で押さえて蹲った。