第1章 初メ×ノ×始メ
初の訓練はきっと「初めての戦闘の心得」など易しいことから始めるのかと思いきや、隊長はとんでもない事を言い放った。
「今日はドラゴン相手に戦ってもらう!」
「「「「……は?」」」」
「返事は!!」
「「「「は、はいぃい!」」」」
ドラゴンとは、戦闘慣れしている母様達でさえ命を落としかねない危険な魔獣。
その魔獣相手の戦闘なんて、私達が束になっても勝てる相手ではない。全員死ぬ。間違いなく。
勝てない自覚がある姉妹達は皆顔を真っ青にしている(私含む)。
「安心しろ。 死ぬ危険が迫ったら私が助けてやる。 さっそく始めるが、3人1組になれ。 1組づつ戦ってもらう!」
「ニーナ、後1人はどうする?」
「そうだな〜…あ! ジェン!」
あともう1人、誰と組もうかと悩んでいた時、ジェンが視界に入った。
「ジェンがいれば心強いわね!」
セラと共にジェンの元へ向かうが、嫌そうな顔をされた。
「何?」
「一緒に組も!」
「お前らと組んで何のメリットがあるんだ?」
「私とセラの生存確率が上がる」
「それお前らのメリット! こっちにはむしろデメリットしかないじゃないか!」
どうやらジェンは私達と組む気は無いらしく、ふんっとそっぽを向いた。 が、隊長の言葉で再びこちらを向かざるを得なくなった。
「よし3人1組になったな! では、ニーナ、セラ、ジェンのチームから訓練を始めよう! 中に入れ」
そう、私は最初からジェンが素直に「うん!いいよ!」と快諾してくれるとは思っていなかった。 なので、他の子達がチームを組み終えるまで時間稼ぎをしたのだ。そうすれば強制的にジェンをチームに入れる事ができるからな。 ぐははは!
嫌がるジェンを仲間に入れてやった、と笑う私、苦笑いを浮かべるセラ、不機嫌な顔のジェンは、隊長に促されるがままにドラゴンが居る巨大な檻の中へと足を踏み入れる。が途端に顔を引攣らせた。
村の外での食料の調達は基本的には姉様を連れて母様が主導で行い、私達は村の中の畑で農作業を行う。 故に、今まで魔獣と対峙した事が一度もない。 初めて見る魔獣に見据えられ、冷や汗が背筋を伝った。
「ドラゴンを殺す必要はない。 1人一回、奴に蹴りを入れられれば合格だ。 貴様達はまだ単独で戦うには弱い。お互いをフォローしながら戦う様に! 始め!!」
