第1章 初メ×ノ×始メ
姉様達が村を発った次の日、初めての戦闘の訓練が始まった。
「よし!今日から貴様らに戦闘術を教えるヘルガだ!」
ドンッと地面に巨大なメイスをめり込ませてそう叫んだのは母様の1人であるヘルガ様。母様に当たる人は、様付けで呼ぶのだ。
ヘルガ様は身長180cmと大柄で、燃えるような赤毛を高い位置で一つに束ねている。
「私はもう貴様らの母様ではない、これからは隊長と呼ぶように!」
「「「「はい!」」」」
今までは世界各国の言語や文化、一般常識を学ぶのが主だったが、ヘルガ様、もとい隊長が戦闘術を教えていたエッダ姉様達の訓練が旅立ちと共に終了したので、私達の番が来たのだ。
私とセラを含めて同期は45人。今日から厳しい訓練を共にする姉妹(きょうだい)達だ。
「外の世界で己より強い男を狩るためには、我々がいる魔境を抜け出す必要がある! この村と周囲は先祖が行った開拓のお陰で比較的安全だが、その先は死と隣合わせの危険が潜んでいる! 貴様らにはその死を蹴散らす術を身につけてもらうぞ! いいな!」
「「「「はい!」」」」
厳しい訓練になるのは目に見えているが、皆どこか楽しそうな表情をしていた。
私はというと、調理場へ忍び込める時間が減るので少し気分が沈んでいる。
「あれ、なんか落ち込んでない? あ、どうせ芋をくすねに行けなくなるなーって考えているんでしょ」
「心の声を読むな!」
芋が食べられなくても、セラとなら頑張れそうだ。