第4章 奇怪×ナ×奇術師
「あ、私ニーナです。 えーっと…」
「あぁ、自己紹介がまだだったね。 ボクはヒソカ。奇術師さ❤︎」
「よ、よろしく、ヒソカ……」
周りはとても賑やかだが、私とヒソカの間には実に重苦しい沈黙が流れていた。 まあ、そう思っているのは私だけだろうけど。
「お?」
「どうかしたのかい?」
「あれは何!?」
話しかけてる相手がヒソカだという事も忘れて、瞳を輝かせる。
だって、あんなもの初めて見たんだもの!
何だか雲みたいだ!
私の視線の先を辿ったヒソカは、納得したかのようにニコッと笑った。
この時の笑顔はまったく不気味に感じなかった。
「あれは綿菓子だよ。 食べてみるかい?」
あれ……食べ物だったのか……
芋以外にこんなに惹かれたのは生まれて初めてだ。
「食べます!」
ピエロを探す目的も忘れて綿菓子へ駆け寄る。
「いらっしゃいませ! 綿菓子はいかがですか?」
近くで見ると凄く魅力的だ。
ふわふわしてて…キラキラしてて…んん〜早く食べて見たい!
財布を取り出そうとしたその時、
「1つ頂くよ」
誰かと思えばヒソカが綿菓子を買っているではないか。
失礼かもしれないが、あなたに綿菓子は似合わないぞ。
「ハイどうぞ。 お近づきのしるしに❤︎」
「あ、ありがとうござい…ます……」
何なんだこの気持ちは。
わ、悪くない…って思ってしまった。
顔が熱くなるのを感じながら、それを誤魔化すように綿菓子へと視線を向ける。
触れてみると見た目通りにふわふわだった。
恐る恐る食してみると、その口触りとスッと溶けて広がっていく甘さに感動した。
「お、美味しい! これすっごく美味しいよヒソカ!」
「気に入ったかい?」
「 はい! すっごく!」
「なら良かった❤︎ ちょうどピエロも見つけたし、ほら行くよ」
「はーい!」
綿菓子で上機嫌になっている今の私は、ヒソカの不気味な笑みなど全く気にならない。
むしろフィルターが掛かってキラキラと輝いてさえ見える。
しかし、そのフィルターも長くは持たなかった。
見つけたピエロと、そのピエロに話しかけているヒソカを見比べてみる。
……あれ? 大差なくない?
ヒソカをピエロだと思わない方が無理あるよね?