第4章 奇怪×ナ×奇術師
外には案の定、あの魔獣がいた。
「くっくっくっく。 よくも俺様に一撃をくらわせてくれたな! その代償は……高くつくぜ!!」
「………」
「……は?」
「これ、あなたにあげる」
そう。 私はこの魔獣が人の言葉を話せると分かって、戦う事をいったん保留にした。
そして差し出したのは拳ではなく、芋。
「お腹が空いてたからあの夫婦の家へ押し入ったんでしょ?」
人を襲ったからといって殺してはいけない。
故郷では無駄な殺生と見做されるからだ。
ここは故郷ではないが、だからといって教を守らなくて良い理由にはならない。
「さっきみたいに人を襲っていたら、生きる為とはいえいずれ殺されるぞ。 この美味い芋をやるからもう人を襲うな」
芋を差し出し、魔獣が受け取るのをじっと待つ。
しかし、魔獣は受け取ろうともせず、芋を凝視している。
「…くくっ……わーはっはっはっ」
「!?」
突然笑い出した魔獣。
正直何がそんなに可笑しくて笑っているのだろうか。
「トーチャンちょっと来ておくれ!」
「え?」
魔獣が背後に向かって声をかけると、同じ種の魔獣が現れた。
「おまえ達ももういいよ!」
「???」
今度は家の中向かって声をかけると夫婦がニコニコしながら出てきた。
「ど、どういう事…」
訳がわからなくて頭が混乱していると、魔獣が説明してくれた。