第4章 奇怪×ナ×奇術師
薄暗く長い道の先には一軒の家が静かに佇んでいる。
「ここがナビゲーターの家かな」
コンコンコンッとノックをしてみるも反応が無い。
留守だろうか…
何か違和感を感じる。
それに、周囲があまりに静かだ。
そういえば、ここに来る道中に看板がたくさん立ててあったな。
何かの注意書きだったのかもしれない。
警戒しつつ、そっとドアノブを回す。
「ッ!?」
そこには2メートルを優に超える獣が我が物顔で佇んでいた。
「た、助け…て……」
「キルキルキルキルキル」
「魔獣か!」
不気味な笑みを浮かべた魔獣は、女の喉元を鷲掴んだまま窓から外の闇へと消えてしまった。
直ぐに追いかけたいが、怪我をしている男の手当てもしなければ!
男のもとへ駆け寄ると、弱々しい声で私に懇願した。
「どうか妻を…妻を助けてくれ」
『「安心しろ!私が必ず連れ戻す!」
家の中にあった布でとりあえず止血をし、女を探しに外へ飛び出す。
魔獣が走り去ったであろう方向を走りながら耳を澄ませる。
あの巨体なら、飛び上がって着地した時にそれなりに音がするはず。
しばらく走っていると枝の軋む音が聞こえた。
風で軋む音じゃない!
足に力を入れ、最大限の力で地面を蹴る。
「いた!」
木から木へと器用に飛んで移動していた。
「はあぁっ!!」
「ンギャア!」
背後から渾身の一撃を食らわせる。
魔獣の手元にから放りだされた女を地面に激突する前に抱きかかえ、来た道を全速力で戻る。
家にいる男が心配だった。
血の匂い誘われて獣や魔獣が群がっていないことを願う。
「はあ、はあ……良かった」
再び襲われた気配はない。
中に入ると男は項垂れていた頭を上げた。
「つ、妻は…」
「大きな傷はないから安心して。 今手当てを…………っ、外に何かいる」
女をそっと下ろし、外に神経を集中させる。
「あの魔獣が戻って来たのかもしれない。 見てくる」
「ま、待って……怖くないのですか? 相手は魔獣ですよ?」
男は心配そうに聞いてくるが、私にとってあのぐらいの魔獣は大した事ない。
「大丈夫。 お2人は私が必ず守ります」