第25章 ドキドキ×ワクワク×試験管補佐
その後ジナーさんは受験生達が集めたお宝を整理するために部屋へ戻ったので、私はバナーさんに付きっきりになった。
バナーさんとお喋りしていると、真っ青な顔で男が駆け寄ってきた。
「部屋を変えてくれ! あの部屋だとカムリが胃炎を起こしそうなんだ! 頼む!」
そう言って我々の目の前に掲げられたのは、ぐったりのとした一匹のお猿。
「そういうのはお客さん同士で解決していただかないと」
バナーさんが困ったように言う。
この返答で男が苛立ってバナーさんへ危害を加えるかもしれないので警戒していると、背後からバタバタと誰かが駆け寄ってきた。
トンパだ。
「はぁッはぁッ、変わってやろうか!」
トンパは男に腕を回し、ずいッと自分の部屋の鍵を掲げた。
「ホントか!? 恩に着るぜ」
男はトンパから鍵を受け取り嬉しそうに去っていった。
ニヤリと笑ったトンパを不審に思い声をかける。
『何を企んでるんですか?』
前回のハンター試験で他の受験生を陥れているような場面があった気がするので、あの男が心配になってしまった。
「お、ニーナじゃねーか。 オレは別に何も企んでねェぜ。 困ったときはお互い様だろ?」
まぁ、あの男もこれで良かったみたいだし……
『まぁ、そうだけど』
トンパが去り、再び私とバナーさんだけになった。と、思いきや、
「部屋を変えて欲しいの! アイツといると息が詰まりそうッ。 お願い!」
両手を合わせて頭を下げてきたのは、可愛らしい少女だった。
受験生は乱暴な連中が多いから、もしかしたらそんな人と相部屋になってしまったのかもしれない。
他に空いてる部屋はないので、私が相部屋の相手にひと言言って彼女に我慢してもらうしかないかな……
そう思い声をかけようとしたら、
「変わってやろうか!」
『トンパ!?』
トンパが再びやってきた。
「ホント!?」
「女の相部屋じゃなくて悪いけど」
「ううん! 助かるわ!」
『ちょっと待って!』
トンパと部屋の鍵を交換した少女の腕を掴む。
少女が今持っている部屋の鍵は、既に2人の人物を追い出した。
誰がいるのかは知らないが、このまま行かせるわけにはいかない。
それに、トンパもなんだかんだ悪い人ではないと思うので、少女が嫌がった人の部屋へこのまま行かせるのは可哀想だ。