第25章 ドキドキ×ワクワク×試験管補佐
来た来た来た!
受験生を乗せた飛行船は翌日の午前に到着した。
バナーさん達と共にお出迎えに行く。
ぞろぞろと飛行船から降りてくる受験生達の中からある少年を探す。
いた!
ゴンは友達と思しき人達と話すのに夢中で、こちらにまだ気付いていない。
直ぐにでも彼のもとへ駆け寄りたい衝動を抑え、バナーさんの話が始まるのをおとなしく待つ。
「「受験生のみなさん、ようこそいらっしゃいました」」
夫婦が話し始めた事によって注目を呼び、ゴンは直ぐに夫婦の斜め後ろにいる私に気付いた。
と、同時にパッと花が咲いたような笑顔向けてくれた。
「当ホテルの支配人を勤めております、バナーと申します。 こちらは主人のジナーです」
「よろしく」
そう、彼等はこのホテルの支配人という設定。
そして私は、
「そして彼女は用心棒のニーナさんです」
用心棒という設定。
「___今、ホテルと言ったようだが?」
凛とした佇まいの男が確認するように質問する。
「はい。 この船は一部を改造し宿泊施設となっております。 かつてネブラの国王にもご宿泊の栄誉をいただき、遠く大陸の名士方にも海に浮かぶ白亜の宮殿と謳われ___」
ジナーさん凄い。ホテルの支配人になりきってるよ……
ぽかんとジナーさんの説明を聞いていると、その男は表情を変えることなく話を遮った。
「前口上はいい。 あんた達は試験管じゃないんだな?」
話を遮られてもジナーさんは気にするでもなく、バナーさんに視線を向けた。
「そうでしたよね。 ではハンター委員会からの伝言をお伝えします。 “合格者のみなさんお疲れ様でした。 四次試験の開始は3日後です。 それまでの間、この島でしばしの休息をお楽しみ下さい。”___」
伝言を聞いた受験生達の顔がパッと明るくなった。
「休み!」
やったー!とゴンが嬉しそうにはしゃいでいる。
「なんだ、拍子抜けだぜ~準備万端だったのによォ……ッンン"、ッオ、ォオ"エェエエ……」
「だから吐くなって」
一緒にいる背の高い男が口を押えて蹲り、白い髪の少年がやれやれと背中をさすってやっていた。
「いずれにせよ休息は助かる。 これまで緊張の連続だったからな」
金髪の女は何も聞こえていないのか、彼らの方を振り返りもしなかった……