第19章 とある民族学者の論考 Ⅲ
目の前に横たわる、頭部を貫かれた“生きる屍”(ウォーカー)。
本体が頭部を貫かれたとしても、直ぐに蘇生する。
しかし、これが“生きる屍”(ウォーカー)だった場合、再び動くことはなく、煙のように雲散してしまう。
急所が狙われていたのは分っていた。
胸を刺されてから、いずれ頭部が狙われることも予想出来ていた。
作戦を実行するまでの時間稼ぎが出来ればと、不審に思われない程度に頭部を庇いながら戦っていたが、まさかこのタイミングで……その上最悪なことに、
「マチ!頭部を狙え!」
あの爆発でも致命傷を免れた男は下の階から女に向って叫んでいる。
頭部を貫かれたのは爆発とほぼ同時。
弱点が判明した頃にこの男が2階から落下し、この2人から情報を得る機会を与えてしまった。
能力の発動を阻止しようとしたのが裏目に出た……
それだけではない。
自滅への迷いが意識の共有を妨げ、気付くのが遅くなってしまった。
もう迷っている場合ではない。
私を今直ぐ“自滅”させる。
「お前達は全員、私と地獄行きだ」
剣を首に当て、勢い良く下へ引く。
全て同時に自滅させれば殺せる。
炎で肉体は焼かれ、熱い空気で呼吸は困難になる。
辛うじて生き残っていても、身を守る為にオーラを纏い続けることは難しくなるだろう。
崩壊する瓦礫の山に押し潰され息絶るがいい______
赤い炎に包まれる中、誰かに手を引かれた
____良く頑張ったね、ドナ。ゆっくりお休みなさい……