第19章 とある民族学者の論考 Ⅲ
「今の爆発音は何だ?」
爆発の衝撃で壁や天井がメキメキと軋む。
「きとコイツの能力ね」
黒尽くめの小僧が手にしていた刀で私を指す。
「てっきりウボォーが暴れてるのかと思ったが……そうだったら今頃ここは更地になってるか」
こんな状況でも奴等は余裕の表情を一切崩さない。
数が増えれば増えるだけこちらが有利に立てる。
だが、発動条件を探っているのか、能力を発動させたくても此方が望むように攻撃してこない。
ここにいるのは本体と“生きる屍”(ウォーカー)1体のみ。確実に息の根を止めるには威力が足りない。
台所に13体
書斎に24体
台所と書斎から数体こちらへ移動させるか……いや、2階にいる“生きる屍”(ウォーカー)はそのまま2階で自滅させる。
書斎に13体残し、5体を台所の上に位置する部屋へ。
残り6体はこの応接間の上に位置する部屋へ移動させる。
そして、台所にいる13体の内5体だけ応接間に移動させる。
同時に全ての“生きる屍”(ウォーカー)を自滅させれば、この家は跡形もなく消え去る。
旦那様。こんな方法しか思い浮かばない未熟な私をどうか許して欲しい……
「ッあ"ぁ」
「心臓はハズレだな」
「じゃあ次は首を刺してみるね」
確実に仕留める方法を思案している間でも攻撃は続く。
最初は足を重点的に狙ってきていたが、今度は急所に狙いを定めてきた。
刀で突き刺されたり、弾を撃ち込まれるだけ。
いずれの攻撃も私の肉体が切断されることはなかった。
発動条件の1つが切断であることを勘付かれた。
次は、“死”がどう能力に関っているのかを探っている。それと同時に本体がどちらかをも。
切断せずに急所を貫いたとき、分身体ならそのまま消え、本体なら死体が残るとでも思っているのだろう。
今し方心臓を貫かれて死んだのは本体。
しかし、“生きる屍”(ウォーカー)を発動している間は何度殺されようと蘇生する。
よって、本体か分身体かを見極めることはほぼ不可能。
分身体である“生きる屍”(ウォーカー)も、本体が能力を解除するか、“自滅”をしない限り消えることはなく再生し続けて戦うが、ひとつだけ弱点が存在する。
あの操作系の小僧が言っていた、本体から指令を受け取っている部位の破壊。
この弱点に気付かれたら、私の能力はもう何の役にも立たなくなる_____
