第19章 とある民族学者の論考 Ⅲ
台所にいた盗人との交戦では、相手の不意を衝いて直ぐに能力を発動させる事が出来た。
しかし、操作系能力者がいるのは不都合だ。
“元”操作系となった今でも、能力には操作系の特徴が現れている。
私に鋭利な物を刺した小僧は操作系で間違いない。
だとすると、操作系能力者の弱点も知っている。
「シャル!なんか方法はねェーのか!!」
「倒す方法は今のところ2つ! 本体を叩くか、本体からの指令を受け取っている物、あるいは部位を破壊する!ちなみにこの中に本体はいないよ!!」
あぁ忌々しいッ……
他の仲間とも情報を共有される前に一刻も速く始末しなければ。
「!?」
共有している意識の内のひとつから、かなりまずい状況が見えた。
(____さて、いくつか質問に答えてもらう。一つ目は、アマゾネスについての研究論文の在処だ……)
論文は旦那様の書斎に保管されている
日記は既に見つかってしまった
論文が見つかるのも時間の問題
この連中はただの盗人でも、ただの念能力者でもない。
もししくじれば旦那様の宝物が奪われてしまう。
残された手段はただひとつ。
最愛の人のために建てた家
彼女の笑顔のために植えた花
生き甲斐だった研究
低俗な輩に荒らされるぐらいなら全てを……全てを焼き払い、無に還す_____
“生ける屍”(ウォーカー)を1体、小僧の背後に回りこませ、正面にいる私は手にしていた剣を投げ飛ばす。
奴は当然のように剣を躱したため、それは背後に回りこんでいた“生ける屍”(ウォーカー)に突き刺さった。
刹那、炎と爆風が辺りを瞬く間に包み込んだ。
「シャル!!」
「……ゴホッ、ゴホッ……大丈夫。生きてるよ」
あの爆発を至近距離で受けて生きている!?
この攻撃は完全に予想外だったはず。
にも拘らず致命傷を回避しやがった。
「キミ、念能力者相手に戦ったことないだろ?」
「!」
なぜそんなことを聞く?
確かに、念能力者に対して発動させたのは初めて。
しかしそれがなんだと言うのだ。
「面白い能力だけど、キミのやり方だとどんな能力なのか相手にバレバレ」
「………」
「キミの負けだよ。敗因は念能力者相手の実戦経験不足!だね」