第18章 とある民族学者の論考 Ⅱ
1981年9月15日
新たな学生が期待を胸にバーバードへと入学する時期がやってきた。
教えるのは今回で最後になる。
私は引退して、あの家で余生を過ごすことに決めたのだ。
毎年優秀で素晴らしい生徒ばかりなのだが、今年は印象的な子が多かった。
特にクルリという青年がそうだ。
彼の趣味は古代語古今東西だという。
何度か彼と勝負したが、なかなか手強い相手だ。
彼は私が引退するのをとても残念がっていた。
私の元で勉学に励むのを楽しみにしていたという。
私はクルリや他の生徒達にあの小高い丘に建っている家の住所を教え、いつでも遊びに来るよう伝えた。
静かな時間も良いが、賑やかな時間も恋しくなるものだ。
さて、あと一年。
悔いが残らぬように頑張ろう。