第18章 とある民族学者の論考 Ⅱ
1927年12月9日
アンネの話はどれも興味深く、私はアマゾネスについて研究することに決めた。
もっとアンネと過ごしたいが、彼女は明日この街を発つ。
彼女の目的を邪魔しないよう注意するからどうか同行させてもらえないかと頼んだら、快く承諾してくれた。
入学して数ヶ月しか経っていないのに休学しても良いものか悩んでいたが、教授や家族が背中を押してくれた。
どんな旅になるか分からないが不思議と不安はない。
あるのは、生まれて始めてする旅への期待だけ。
この日記も持って行くことにしよう。
明日は早朝に出発すると言っていたので、そろそろ寝なければいけないのだが興奮と緊張で目が覚めてしまっている。
アンネはもうぐっすりと眠っている。
初めて会った日から彼女は客用の部屋に寝泊りしている。
普段は野宿をしているそうで、私の両親が家で寝泊りしないかと提案したとき、彼女は即答でその提案を受け入れた。
ベッドの寝心地の良さを知ってから野宿が億劫になり、ベッドで眠れるのが嬉しいと言っていた。
だから強い男を捜しに行くこともなく、ずっとこの家にいたのだと彼女は笑った。
そんな調子で大丈夫なのかと少々心配になったが、同時にそんな彼女を面白いとも思った。
果たして彼女はお気に召す男を見つけることが出来るのだろうか……