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覇者×ト×敗者

第18章 とある民族学者の論考 Ⅱ


1927年11月26日



不思議な女性と出会った。
小さな島国・ジャポンの民族衣装に似た衣服を身に纏った彼女の名はアンネ。


街でゴロツキに絡まれていた私を助けてくれた。
複数のゴロツキをたったひとりであっという間に倒してしまったのだ。
せめてものお礼にご馳走を振舞い、そこで彼女は故郷のことや、旅をしている目的など色々と教えてくれた。


彼女は自分がアマゾネスと呼ばれる、女性のみが生まれる民族だと言った。
しかし、そんなことがあり得るのだろうか。
生殖に異性を必要とするのであれば、一定の確率で男性も生まれるはずなのだから。


人種的に肌や瞳、髪の色に違いがあろうと元は同じ人間。
魔境と呼ばれる地で生活している民族だとしても、人間であることに変わりないはずだ。


だが、彼女が嘘を吐いているとは思えなかった。
現に彼女は強い男を求めて旅をしている。
生活環境に適応するため、体に何かしらの変化が生じたのだろうか。
彼女の故郷がある地は、本来人間が生活出来るような環境ではないのだから。
あるいは、一角族のような亜人の一種かもしれない。


そういえば、新世界紀行に載っていた巨人・ティフォンも女性だけの種族だった。
ただし、ティフォンと違ってアマゾネスは単独で子をなすことができない。


実在するかどうかも怪しい種と比較して考察している自分の滑稽さに笑いが込み上げてくる。
でもどういうわけかアマゾネスがティフォンと重なってしまう。


そうか。
もしかしたら本の著者であるドン=フリークスは、そもそも存在しない新世界などへは行っておらず、本に記述されている生き物はすべて実在するものを元に書いたただ空想。
そして、巨人・ティフォンの元になったのがアマゾネスに違いない。


あの本が空想小説の棚に並べられたのは当然のことだったのかもしれない。
長年読むのを期待していた本が、実は本当にただの空想小説だったと分かった途端急に虚しくなった。


でもこれでいい。
ただの空想小説で良かったのだ。
もし本の中の生き物が本当に実在したら、それこそ一大事なのだから。



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