第17章 とある民族学者の論考 Ⅰ
「お、台所だ!何か食いもんねーか見てみようぜ」
「そんなことしてる場合じゃないだろ」
「まあまあ。腹が減ってはなんとやらだ」
「もう…」
ウボォーギンが冷蔵庫を漁る間、シャルナークはあまり期待せずに棚や引き出しの中を調べてみた。
しかし、案の定食器や調味料しかない。
「こんな所調べてもやっぱり意味ないか。ウボォー、はやく別の場所を探しに行くよ。書斎かツェザールの寝室を探そう___ッ!」
「聞こえたか!誰かがさっそく戦闘を始めたみたいだな」
聞こえてきたのは銃撃の音。
「フランクリンかな」
「ッかぁ~俺も戦いてェ!」
ウボォーギンが悔しそうに拳を握り締める。
「オレ達に出番はな……くもないか」
「ッしゃぁあ!」
フランクリンとフェイタンだけで直ぐに片付くと思っていたシャルナークだったが、近づいてくる殺気に身構える。
ウボォーギンははやくもオーラを身の周りに充満させていた。
「低俗な盗人がぁああ゛ッ!!」
走って来たままの勢いで台所に入ってきた女は、そのまま近くにいたウボォーギンへと斬りかかった。
「あッぶねェ~!」
易々と女の攻撃を避け、余裕の笑みを浮かべる。
ウボォーギンを捕らえ損なった彼女の剣は、背後にあったテーブルを真っ二つにする。
「ウボォー!」
「任せろ!」
シャルナークに視線を向けるとその手にはアンテナが握られていた。
何を意味するのか瞬時に理解したウボォーギンは、彼がアンテナを刺す隙を作るために、女を粉々に吹き飛ばさない程度のオーラを拳に集めて殴りかかる。
しかし____
「オレの拳を受けても壊れねェとはな……なかなか良いもん持ってんじゃねェか」
女はその拳を剣で受け止めてしまった。
全力を出していないとはいえ、強化系の攻撃に耐えられる武器はそうそう無い。
高い攻撃力を誇る強化系に対抗でき得る武器は、具現化系能力者によって作り出された特殊な武器。
ウボォーギンにとってはあまり相性の良い相手ではないが、本人はお構いなしに女を攻めていく。
数分間攻防が続いた後、女がウボォーギンの拳を再び受け止めた瞬間、突然糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちた。