第17章 とある民族学者の論考 Ⅰ
死体を見つめていても仕方がないので、部屋を後にしようとドアへ歩き出した。
ところが___
「ッ!」
「…嘘だろ」
背後から気配を感じ、振り返るとそこには先程真っ二つにされたはずの女が立っていた。
切断されたはずの体は元通りになっているが、先程と違うのは女が2人に増えていること。
顔も、衣服も、持っている剣も同じで、まるで___“分身”。
「興味深い能力ね」
「これが使用人“達”の正体か」
フェイタンはもう一度刀を構え、今度はフランクリンも参戦する。
フェイタンが片方に飛び掛るのと同時に、フランクリンももう片方へと攻撃を仕掛ける。
“俺の両手は機関銃”(ダブルマシンガン)
銃口のように改造した両手の指から念弾を連射する。
その威力は凄まじく、当たった家具や壁は粉々に砕いていく。
「う"ッ」
全ての念弾を避け切れなかった女は右腕と左胸に受けてしまった。
細い腕は呆気なく胴体から切り離されて無残に床へ転がる。
フランクリンがフェイタンへ視線を向けると、丁度片付け終わったところで、今度は首を切断された状態で死んでいた。
「やぱりこの女わざとワタシに斬られたよ」
「オレの念弾もわざと受けたように見えた。また増えると思うか?」
「増えても弱いことに変わりないよ」
「そうだけど、ゴミと同じで多ければ多いほど片付けが面倒になっていくぜ」
死体を観察していると、死によって消えたはずのオーラがその体から息を吹き返すかのように溢れ出てきた。
「死後発動する能力か」
「それにたぶん迎撃型(カウンタータイプ)ね」
「こりゃ思ったよりも厄介かもな」
2人が話している間も、溢れ出たオーラは失った体の部位をたちまち修復していく。
体の修復が終わり、今度は女が4人に増えた。
「フェイ、動きを制限するために足を狙おう。発動条件はまだ明確に分からねェが、とりあえず殺すことを避けるのが得策だろ」
「了解」
フェイタンとフランクリンが足に狙いを定めて攻撃を仕掛ける。
しかし、その攻撃に応戦したのは2人だけで、もう2人は隙をついて部屋から出て行ってしまった。
まさか部屋から出て行くとは思っていなかった彼らは一瞬呆気にとられてしまう。
「___そうか、数を増やして他の奴らの所へ行ったのか」
「ただのゴミじゃなかたわけね」