第16章 観戦×デ×発展
「どうしたんだい? 足はまだ動くだろう」
「………」
ゲンドラは脇腹を抑えながらよろよろと立ち上がる。
が、その顔にもう覇気はなかった。
あの表情、相手との実力差をこれでもかと見せつけられて絶望した者の表情だ。
戦う気力を失ってしまったのだろう。
「つまらない。この程度で……がっかりしたよ」
わざと狙いをつけていなかった足へドスッ、ドスッと容赦なくトランプを突き刺していく。
「あ"あァあ!!」
「早くかわさないと♠︎ 自慢の足が使い物にならなくなる前に」
ヒソカの容赦ない攻撃に会場が静まり返る。
響くのはゲンドラの苦痛に満ちた断末魔だけ。
耳と目を塞ぎたくなるような光景が暫く続いた後、とうとうゲンドラが倒れてしまった。
審判が近寄って脈を確認している。
「ゲンドラ死亡により試合続行不可!! KOにより、勝者ヒソカ!!」
「本当に……殺したのか……」
姉様の話は本当だったんだ。
ヒソカは退場する際、一瞬だがこちらに視線を向けた。
私と戦う時を待ちわびていると言いたげなその表情に背筋がゾッとしたが、僅かに興奮している自分がいる。
ヒソカは本気を出していなかった。
だが、必ずあの余裕の笑みを消してみせる。本気を引き出してみせる。
それに……奴の本気を引き出すことが出来れば、少なくともあんな悲惨な最期を迎えずに済むだろう。
ヒソカと鉢合わせする前に早急に天空闘技場を去った私は、まだ興奮が覚めきれていない。
今日の試合で闘争本能が刺激されたのは間違いない。
悔しいが、あんなふざけた奴の試合でだ。
それでも2点ほど気になることがあった。
談話室の椅子に腰掛け、先程の試合で見た光景を思い出す。
一点目は、あのトランプの威力。
ただの紙切れにしか見えないのに、いとも簡単に肉を切り裂いた。
投げる力だけであの殺傷力が出せるはずがない。
2点目は、ゲンドラの動きを封じた何か。
ゲンドラはヒソカへ向かおうとしたが、不自然な形で止まってしまった。
止まった、と言うより止められた、の方が正しいか。
普通、動きを止めたいと思った時は、進んでいる方向とは真逆の方向へと重心を置いて動きを制しようとするものだ。
しかし、ゲンドラにそんな様子はなく、明らかに本人の意思で止まった訳ではないのは一目瞭然。
ヒソカの_____念能力……?
