第16章 観戦×デ×発展
通されたそこは、壁の一面だけガラス張りになっている部屋だった。
「す、すごい」
上等な椅子に腰掛けた後、係員が飲み物と軽食を持ってきてくれたので、それをつまみながら試合が始まるのを待つ。
下の観客席は満席で、皆試合が始まるのを今か今かと楽しみに待っている。
それにしてもこんな良い席のチケットをくれるなんて、ヒソカにも良いところあるじゃないか。
もう暫く待っていると、会場の明かりが突如全て消え、中央のリングだけがその存在を強調するかのように照らされた。
‘皆さま大変お待たせ致しましたァアーー!! これよりお待ちかねのヒソカ選手 v.s. ゲンドラ選手の試合を開始致しまァアアーーす!!’
「始まった!」
‘先に登場するのは〜〜〜ゲンドラ選手です!!’
ゲンドラと呼ばれた選手は小柄な男だった。
‘反対側のゲートも開きましたァーーー!! ヒソカ選手の登場です!!’
ヒソカ____変わらず憎たらしい笑みを浮かべての登場だった。
「ッ!」
ふたりがリングで向かい合った瞬間、全身の毛が逆立つのを感じた。
お互いに向けられた静かな殺気。
「ポイント&KO制!! 時間無制限、一本勝負!! 始め!!」
ガラス張りで生の声は聞けないが、部屋に音を届けてくれる機器が設置してあるお陰で状況理解には不自由しない。
開始の合図と共にゲンドラ選手が最初に動いた。
「速い!」
‘ゲンドラ選手の超高速移動です!! 小柄な体型を生かして目にも留まらぬ速さで相手を翻弄します!!’
なんとか目で追うのがやっとだ。
ヒソカはどうするのだろう。
‘ヒソカ選手一歩も動きません!!? ゲンドラ選手のスピードに手も足も出ないのかーーー!!’
違う。あの余裕の笑みは____
高速で移動していたゲンドラがヒソカ目掛けて攻撃を繰り出した。
背後からの一撃。
「な!?」
「くっくっく」
‘な、なんてことでしょう!! ヒソカ選手、ゲンドラ選手の背後からの攻撃を見事にかわしましたーーー!!’
後ろを振り向くことなく、背後からの攻撃が来るのを分かっていたとでも言わんばかりのかわし方だ。
ニィッと口角を釣り上げて笑うヒソカに、ゲンドラが瞬時に距離を取る。
「今日は特別な人を招待したんだ。 だから……直ぐに死なないよう頑張ってくれよ?」
「人をあまり愚弄するな____ッよ!」
