第15章 念×ノ×覚醒
確か姉様の部屋はここだったかな。
コンッコンッと軽く扉を叩くが反応が無い。
「エッダ姉様」
扉に顔を近づけて呼びかけた後に耳を澄ませるが、中からは何も聞こえてこない。
もう眠ってしまったのだろうか。
この時大人しく部屋へ戻るべきだった。
翌日、纏を解いて寝てしまったことを話せば済むこと。
姉様の睡眠を邪魔するのも、普段の私なら絶対にしないだろう。
なのに「寝る間は纏を解いてもいいですか?」と聞かなければいけない使命感を感じて自室へ戻らなかった。
疲れで思考が可笑しくなっていたのかもしれない。
ドアノブを捻ると、ガチャリと開いた。
あれ、鍵を掛け忘れたのかな?
「失礼します。どうしても聞きたいことが……」
うっかりさんだな〜なんて思いながら部屋へ足を踏み入れた瞬間、
「!」
全身を駆け巡った悪寒で息が詰まると同時に、何かがすぐ目の前に現れた。
空中をふらふらと漂う黒いボロ布を身に纏った……人間?
それ以上考える間もなく、鋭い爪で襲い掛かってきた。
間一髪で避けた時、ベールで覆い隠されていたその顔が見えてしまった。
「ぎゃああ"ぁあ!!」
あれは生きている人間の顔ではないッ____
「な、なに!?ニーナ!?」
エッダ姉様が寝ているベッドに飛び込む。
驚いて飛び起きた姉様にしがみつきながら、迫って来ているであろうアレを指差して、
「姉様ぁああ"!!ば、バケモノ!バケモノがぁあ!!」
と、必死で訴える。
「あ、あぁ……驚かせてすまないが、あれは私の能力のひとつなんだ」
「……え?」
「事前に知らせておくべきだった。私が寝ている間は部屋に入るなって……」
姉様は私が指差していた方向を見ながら、申し訳なさそうに話した。
恐る恐る視線をアレがいた場所に向けると、そこにはもう何もなかった。
あれが念能力………怖すぎだよ!
あれは完全に屍だ。
一刻も早く記憶から消し去りたい……
なのに、そう思えば思うほど余計鮮明に思い出してしまう。
かつては純白だったであろう花嫁衣装。
ボロ布と化したその隙間から見える腐敗によって破れ落ちた皮膚。
顔はベールで覆い隠されていて見えたのは一瞬だったが、トラウマになるのに十分だった。
腐って沈んだ眼球に、外れた下顎から飛び出した長い舌……
_____念能力とはあんな怖ろしいモノなのか!?
