第13章 道しるべ
道しるべは、この街の中で一番治安が悪いエリアに続いていた。
道行く人々が睨んでくる。歓迎されていない証拠だ。
仕方ないか……
店の物を盗んだ盗人を追いかけると、いつもこのエリアに辿り着く。
私に捕まった盗人の知り合いも多いだろう。
「ここか」
入り組んでいる路地裏を進んでいくと、小さなボロ屋に着いた。
ドアノブを捻ると鍵がかかっていたので、力を込めて手前に引っ張った。
「誰だ!?」
外れた扉を投げ捨てて中へ入る。
「もしかして……この女を探しにきたのか!?」
「それ以上近付いたらこの女を殺すからな!」
「………」
椅子に縛り付けられたひとりの少女。
資料で見た写真のルージュ=ラストラスで間違いない。
「ルージュだね。お父上の依頼で助けに来た」
「ッ!」
口を塞がれて言葉を発する事は出来ない彼女だが、その目には涙が溢れている。
「ふざけるな!」
「生きて帰れると思うなよ!」
武器を手にして襲ってくる男達だが、ヘルガ様もとい隊長の訓練を受けた私の敵ではない。
正面から迫って来たふたりが腕を振り上げる。
晒された喉元を、左右の手でそれぞれとらえて締め上げる。
誘拐犯は片付いた。後はルージュを連れて戻るだけ。
「ん"ーーんんー!!」
彼女が何かを伝えようとしている事に気付くより先に、
「!?……つッ…」
背中に衝撃を感じた。
誘拐犯はここにいる2人だけだと思い込んで完全に油断していた……
「まさかもう見つかっちまうとはな」
前に回り込んだ男の手にはナイフが握られている。
ナイフに付着している血の量が傷の深さを物語っている。
結構深く刺された……
「……ッ」
立っているのが辛くて膝をつく。
自分はまだまだ未熟だな。
訓練だったら、間違いなく隊長のメイスに飛ばされていただろう。
「残念だったな、姉ちゃん」
このまま殺されてたまるかッ!
反撃しようとしたその時、
「ぐふッ!?」
「ッ!?」
背後から私を飛び越え、男を蹴飛ばしたのは、
「戦いの経験はそれなりにあるんだろ?一瞬の油断が命取りになるってのに!最後まで気を抜くんじゃないよ!」
館にいたあの少女だった。