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覇者×ト×敗者

第12章 君にさよならを


「薪拾いご苦労さん。私達はこれから狩りに出るから、妹達を頼んだよ」

「はい」

妹達とは、最近生まれた赤子達のこと。
子守を手伝うために、赤子が育てられる家屋へと向かう。

「エッダ!ちょうど良かった。ニーナを任せても良い?」

「はい!」

姉様から、数週間前に生まれたばかりのニーナを受け取る。
ニーナは私が抱くと大人しくなるから、いつもこうやって任される。

「よし、よし」

揺すってやると、嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ニーナは本当にエッダが好きなんだね」

そう姉様に言われて、頬が熱くなるのを感じた。
こうして誰かに好かれるのは、すごく嬉しいから。

「………」

ふと、境界線で会ったあの子が脳裏に浮かんだ。
あの子はどこか寂しそうだった。
なぜ柵の外側にいたのだろう。
………明日、また会いに行って聞いてみようかな。



翌日、再び薪拾いをしたあの場所へ向かった。
しかし、待てど暮らせどあの子は現れない。

「………」

探しに行こう。
あの子は柵の外側にいたんだ、だから外へ出てもきっと大丈夫。

「よっ、と」

まだ体が小さいので柵の間を簡単に抜けられる。
昨日あの子が歩いて来たであろう方向を予想しながらしばらく歩いていると、

「ここで何してるの?」

「ッ!?」

急に背後から声を掛けられた。
昨日の子だ。

「私エッダ。君は?」

「………」

「?」

どうしたのだろう。
困った表情を浮かべて俯いてしまった。

「母様に、誰とも話すなって……」

「内緒にすれば大丈夫だよ!」

少し悩んだ後、名前を教える気になってくれた。

「そうだね………名前は、ウボォーギンっていうんだ」


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