第13章 鯉登家にお泊まりに行こう
「ちょっ………!
まだ荷物を持ったままなんだけど!?
そして音之進くん足が速いね!!?」
余程、に母であるユキの料理を食べて欲しいのかの言葉をまるっと無視したまま音之進はを居間へと連れて行く。
そんな様子をユキは微笑ましく見つめていた。
「よう来たな勇作君」
音之進に案内された洋風な造りの居間にある椅子に座って新聞を読んでいたのは平二だった。
「お邪魔しております」
は深々と礼をした。
「堅苦しかとはよか。
今日こけ(ここ)来たんな陸士の候補生、花沢 勇作じゃなく音之進の友人の花沢 勇作や。
ゆっくりしていきやんせ」
「あなた、決めちょっ所悪かどん新聞が逆さぁど」
ユキの指摘に平二は慌てて逆さまだった新聞を持ち直す。
「ごめんなせ。
音之進が友人を家に連れて来たとがはいめ(初めて)っじゃっであたいもこんしも(この人も)舞いあがってしもて」
ユキが恥ずかしそうにに説明をする。
平二も新聞が逆さまだったのが恥ずかしかったのか咳払いをしていた。
「いえ。
こんなに温かく出迎えていただけて嬉しいです」
は鯉登一家の仲良しな光景を見て、前世の家族が恋しくなった上、羨ましく思った。
(血の繋がった家族はあのクソヤローと死亡フラグしか居ないもんなぁ……………。
亡くなった母さんとは仲良くもなければ悪くもない感じだったからなぁ……………)
前世の記憶を取り戻す前まで自分の母親がどこかよそよそしく感じることがあった。
だが、前世の記憶を取り戻した今なら何となく分かる。