第12章 函館で三輪自動車に轢かれかけたと思ったら誘拐された
「そうやった!
父上!!」
音之進は何かを思い出したようで部屋から飛び出して行った。
「もしかして音之進くんのお父上も………?」
「ああ。
私と一緒に突入したからどこかにいるはずだよ。
悪いんだが勇作君、私は到着が遅れている部下と合流して誘拐犯の処理をするから彼についててくれるかい?」
「分かりました!」
鶴見の言葉でも音之進を追って部屋を出て行く。
鶴見も部屋から出て行き、自分が撃ち殺した誘拐犯の死体がある部屋へ移動する。
「……………どうだったかね?
勇作君にバレなかったかい?」
あらかじめ用意していた死体に自分達の着ていた服を着せている月島、尾形、菊田の3人に鶴見は声をかけた。
「恐らくはバレていないかと」
月島が答えた。
2人は黙って頷いた。
「それは良かった!
本当は鯉登閣下の息子だけのはずだったのに勇作君まで誘拐したと聞いた時は驚いたよ」
「すみません。
まさか対象と一緒に花沢候補生がいるとは知らず…………」
菊田が申し訳なさそうに言った。
「構わないよ。
終わり良ければ全て良し、だ」
鶴見はそう言ってニヤリと笑った。
「父上、父上!」
「う…………」
倒れていた父親である鯉登 平二に駆け寄る音之進。
何故か平二の格好は上半身裸で元は長ズボンだったのがどこかで破れて短パンになっておりその状態でサスペンダーをしているというなんとも不思議な格好だった。
「気がちた」
平二の目が開いてホッとする音之進。
「無事やったか音之進……………。
よう戦(たたこ)たな…………。
誇らしかど」
ニコッと笑いながら言った平二の言葉に音之進は目に涙を浮かべる。
「君は……………?」
音之進の隣にいたの姿に平二は首を傾げる。