第12章 函館で三輪自動車に轢かれかけたと思ったら誘拐された
パァン
パパァン
パァンパァン
銃の撃ち合いが部屋の外から聞こえる。
(鯉登少尉側の人達が助けに来たのかな!?)
はそう考えながら縄が解けないことに苛立ちを覚える。
やがて銃声がなくなる。
(どっちだろう?
誘拐犯が勝ったの?
それとも………)
は部屋の外から何か物音が聞こえないから耳を澄ます。
「こっちです!」
音之進の声とこの部屋に向かっているのだろうバタバタ走る音が聞こえてきた。
「無事やったか!?
勇作!!」
音之進が部屋に入ってきた。
「私は無事だけど…………!!」
音之進に続いて入ってきた男には驚き目を見開いた。
「鶴見少尉殿っ!」
「やぁ勇作君。
災難だったね」
鶴見がに声をかけていると音之進はの縄を解こうと縄の結び目を手に持つ。
「2人は知り合いなんか?」
「鶴見少尉殿は私の父親の部下にあたる方で何度か面識が………」
音之進の質問にが答える。
「そうやったんか。
…………よし!
解けたぞ!」
「ありがとう音之進くん」
は自分が縄を解こうともがいた時についた手首の跡をさすりながら音之進に礼を言った。
「鶴見少尉殿は何故こちらに?」
「鯉登閣下が君の父上に相談してね。
私に白羽の矢が立ったのさ。
まさか勇作君まで誘拐されてたとは知らなかったよ」
「ははは………。
偶然巻き込まれまして………………。
候補生として恥ずかしい限りです」
鶴見と会話をしながらは最近、よく鶴見中尉と出会うな…………と内心冷や汗をかいていた。