第12章 函館で三輪自動車に轢かれかけたと思ったら誘拐された
「お前、変わっちょっな(変わってるな)」
音之進はそう言って笑った。
「音之進くんには負けるよ」
も音之進につられて笑った。
『電話をする。
例の子供の方を連れて行く』
誘拐犯2人が入ってきて音之進を連れて行った。
と見張りの男が部屋に残る。
(うーん…………隙を見て何とかならないかなぁ…………)
は見張りの男を眺めながら考える。
(……………この人、よそ見をしているふりして鏡でこっちを確認している。
隙がない………!
上手く縄抜けできても実力もありそう…………。
何かいい方法はないのかな?
私はここで殺されてしまうの……………?)
は悔しくなって自分の下唇を噛んだ。
ドガァッ
ガシャン
「おおおおおおお!!」
大きな物音と何かが割れる音。
そして音之進の叫び声が聞こえてきた。
「な、何が?」
は何が起こっているのか耳を澄ませる。
見張りの男はの様子を見ながら扉を少し開けて部屋の外を確認していた。
やがて物音が聞こえなくなり、静かになる。
(もしかして鯉登少尉が誘拐犯に対抗して押さえつけられた音………?
鯉登少尉、大丈夫かな………?)
が音之進の心配をしている時だった。
ドガンッ
「音之進〜!!!」
扉を蹴破った音の後に聞こえてきた声はが聞いたことのない男のものだった。
見張りの男が素早く部屋を出て行った。
侵入者を探しに行ったのだろう。
は今のうちにと思い、縄を外そうともがく。