第12章 函館で三輪自動車に轢かれかけたと思ったら誘拐された
見張りの男とは別の男が部屋に入ってきた。
男は縛っていると音之進のところへ来ると何かパンのようなものを目の前に差し出した。
『食べろ』
音之進は男から差し出されたパンを食べると何か気づいたような表情になる。
『これはどこにあった?』
達を見張っていた男が音之進が食べたパンと同じもののクンクン匂いを嗅いでいた。
と音之進は不思議そうに見張りの男を見つめる。
『食べるな!
かなり古いものだ』
見張りの男にそう言われてパンを持ってきた男は持ってきたパンを全部持つと部屋から出て行った。
「何だったんだろう?」
男達の行動には首を傾げた。
「さっきの………月寒あんぱんやった」
「月寒あんぱん………?」
音之進の言葉には首を傾げた。
「鹿児島おっ時に人から貰うて食べた事がある。
あの人は元気にしちょっじゃろうか」
そう言った音之進の表情は穏やかだった。
「そういえばお前に月寒あんぱんの人と同じ事をされたな。
あの人もオイが運転する乗り物に飛び乗ってきた」
「何?
まさかその月寒あんぱんの人も轢きかけたの?」
「いや思いっきりぶつかった」
「もうあの三輪車運転するのやめときなさい。
いつか事故して死人が出そうで怖いし君もただじゃすまないと思う」
はこのまま音之進に真剣な表情で言った。
「誰かに似ちょっち思うちょったがオイの兄さあに似ちょっ」
「え?
お兄さんいるの?」
音之進の言葉に驚きながら
(知らなかった。
鯉登少尉はてっきり一人っ子だと思ってた。
意外だなぁ)
はそう思った。