第9章 エビフライに限らず転生してから洋食が恋しいです
「銃の位置が下がってるぞ!
気を抜くな!!」
達が走っている中、菊田の檄が飛ぶ。
「佐藤!
列からはみ出しているぞ!」
佐藤が集団から遅れてきた事を注意する菊田。
その時だった。
佐藤が手を滑らせて銃を落としてしまった。
バアァァンッ!!
銃が暴発し、弾丸が菊田を襲った。
「菊田軍曹殿っ!!」
倒れた菊田に陸士の学生達が集まる。
は風で飛ばされていく菊田の軍帽を見つけ拾いに行った。
「大丈夫だ。
俺に弾はあたってない」
菊田は起き上がった。
「誰か俺の軍帽知らないか?」
「自分が持ってます」
は菊田に拾った軍帽を渡した。
「すまん。
助かった」
「いえ。
ですが軍帽のここに弾が当たったのでしょう。
穴が空いています」
は菊田の軍帽に穴が空いていることを菊田に伝えた。
「構わん。
弟の軍帽だから捨てられん」
「弟?」
菊田はから軍帽を受け取ると軍帽を懐かしむように見つめた。
「日清戦争で死んじまった弟がくれたもんだ。
例え穴が空こうと被り続ける。
おかしいと言われるかもしれんが物には持ち主の力が移る。
この軍帽に込められた弟の力が俺の力になる。
俺はそうやって日清戦争を乗り越えた」
菊田の話を達は静かに聞いていた。
日清戦争の経験者が語る話だ。
誰も菊田の話を茶化す者はいない。
「訓練の途中だったな。
すぐに列を組み直せ!
再開するぞ!!」
菊田の言葉に達は大きな声で返事をすると再び訓練を再開した。