第2章 蘇る前世の記憶
ガチャリ
部屋の扉が開く音がして、勇作は音がした方へ勢いよく振り返った。
そこには勇作が見たことがない洋装を着た若い女性がいた。
「す、すみません!
気がついたらここにいて決して怪しい者では……!!」
勇作は慌てて女性に言い訳をする。
「あ"あ"ぁー。
マジ仕事しんど…………。
あのクソ上司、自分の仕事押し付けてさっさと帰りやがって!」
女性は勇作に気づいてないのかそのままベッドへうつ伏せに寝転ぶ。
「あ、あの?
もしもし??」
勇作はベッドにうつ伏せになっている女性に声をかける。
「はぁ………スーツ脱いで化粧落とさなきゃいけないのにやる気が起きない…………」
だが、女性は勇作に気づかない。
気づかないというより女性に勇作の姿は見えず、勇作の声も聞こえてないようだ。
「はっ!!
そうだった!!
ゴールデンカムイ新巻を買ったんだった!!」
女性はベッドから勢いよく起き上がると鞄から紙袋に包まれたものを取り出した。
「前の巻がいいところで終わったから気になってたのよね〜」
そう言いながら女性は紙袋から中身の本を取り出すと読み始めた。
勇作は女性が読んでいる本を悪いとは思いつつ、背後から覗き込んで見た。
そして全てを思い出した。
目の前にいる女性が自分だった事に。
この新巻を読んだ次の日の夜に居眠り運転したトラックにひかれて死んだという事に。
そして今の自分がゴールデンカムイという漫画のキャラクター花沢 勇作だという事に。
「トラックにひかれて死んだら花沢 勇作に転生したってこと?
嘘だぁ…………。
だってゴールデンカムイは漫画の話なのに………」
勇作は気づいた事実を受け入れられなかった。