第13章 かしゅがやま
「そう呼ばれるのも悪くないな...ほら姫君、団子食べるかい?」
「信玄様、それ俺が隠しといたヤツjy「幸、細かいことは気にするな」オイ」
幸村のツッコミを華麗にスルーし、何処ぞの皇室御物のようなことを言いながら佐助の腕の中にいた雪月をなんのためらいもなく抱き上げる信玄。
一瞬雪月が身体を硬直させたことに気付いていた信玄だったが、そんなことお構い無しにその小さな手に団子を持たせるのだった。
「ふぇ...?」
数回顔を合わせただけのほぼ見知らぬ男性に抱っこされ、何故か団子を勧められているという状況に着いて行けずフリーズする雪月。
「信玄様、雪月ちゃん固まってますよ」
「つか、泣きそうじゃねぇか?」
どうすれば良いのかわからずだんだん涙目になっていく雪月。
大きな目から涙が溢れそうになった瞬間だった。
「!ふぇ?」
「え?」
ふわりと何者かに抱き上げられる雪月。驚いた信玄の視線の先には、謙信の胡座の上にすっぽりと収まる雪月の姿が。
「謙信、何を...あ、」
よくよく見れば、謙信の周りが何故か真っ白になっている。雪ではない、もふもふしているそれは、
「......謙信様、まさか兎で釣る作戦ですか」
「ふぉぉ......」
呆れる佐助。しかし雪月は、初めて見るもふもふに目を輝かせていた。
「...撫でてみろ」
「ふぁ...!」
謙信はおもむろに傍にいた1羽の兎を雪月に手渡した。
「ふ、ふあふあ!ふひゃ~」
満面の可愛らしい笑みを浮かべて兎を抱っこする雪月。
「ぁ、ありがと!けんしゃま!」
「あぁ......ん?」
謙信は何かに引っ掛かった。そう言えば、自分はこの娘に名乗っただろうか...?
「うめちゃ、おしえて、くれた!このひと、けんしゃま、って」
「?!」
確かに、雪月が今抱っこしている兎の名前は梅だが、この兎の名前だって教えていないはず。
では、何故?
「......此方の2羽の名は?」
「まつちゃ、たけちゃ!」
「!」
残りの2羽の名前も間違えなかった。どうやら偶然ではないようだ。