第13章 かしゅがやま
「お、お前は...!?」
「確か、あの日の夜に本能寺の近くで会った...」
目の前に現れた少女の姿に驚き目を円くする武田主従。しかし雪月は佐助の胸に顔を埋めたまま見向きもしなかった。
「...で、何であの時のちび助が信長の所なんかにいるんだよ?」
「それについてもこれから話す...雪月ちゃん、」
「あい」
「ちょっと外でピカチュウ達と遊んで待っててくれるかい?」
こくり、と頷く雪月を確認すると、次は自分の足下にいたポケモンに目を向けた。
「ピカチュウ、カリキリ、雪月ちゃんのことをしっかり見ていて。で、何かあったらすぐに伝えてくれ」
「ぴっか!」
「かり!」
手をあげて良いお返事をする2匹。
外へ駆けていく一人と2匹を見送ると、佐助は改めて3人と向き合った。
――――雪月の事を話す為に――――
そして数分後。
「...ここまでで何か質問は?」
佐助は、自身と雪月の関係、雪月の生い立ち(仮定)、信長及び安土の武将達と雪月の関係、そして今回雪月が春日山へ来るきっかけとなった騒動について全て話した。
その内容は3人にとっては信じがたく、佐助が話終えても誰も動けなくなるくらいだった。
――――それだけ、衝撃的な話だったから――――
「...っ、」
耐えきれなくなってしまったのか、幸村が部屋から飛び出して行った。
「幸村、」
「そっとしておいてやれ」
後を追おうとした佐助を信玄が止めた。
「佐助、」
「はい」
ずっと黙っていた謙信が口を開いた。
「あの小娘を嬲ったのは何処の輩だ?」
「...はい?」
予想外の言葉に、思わず聞き返した佐助。
気がつけば、何と謙信は抜刀していたのである。
「少し野暮用が出来た。暫し城を空ける」
「待て待て待て待て!?!?」
謙信の目的が何なのかわかった信玄が謙信を羽交締めにした。
「離せ信玄。貴様から斬り刻むぞ」
「謙信様、どうどう、どうどう」
...どうやら、この斬り合い大好きな城主の琴線に触れてしまったらしい。
(伊勢姫に重ねちゃったんだな...)
兎も角、一番厄介そうな人物は受け入れてくれたととっていいだろう、佐助はホッと息をはいた。