第12章 ほーこく
安土城で武将達の絶叫が響き渡った頃。
「雪月ちゃん、大丈夫?!」
「へーき!」
「もうちょっとで着くからね!」
春日山付近の上空を飛行するリザードンに跨がってるのは、信長が呼び寄せた佐助、そして雪月。
(雪月ちゃんのこと、どう説明しようか...)
遡ることだいたい一週間位前。
佐助の下に一通の文が届いた事から始まる。
「...とんでもないことになったな」
眼鏡のブリッジを持ち上げながら佐助は呟いた。その表情は、普段クール(?)で通っている彼にしては珍しく焦燥している。
(あの時、雪月ちゃんを追いかけまわしていた連中の仲間が、この時代に紛れ込んでいたのか...)
文の内容は、雪月の誘拐事件に関連することと、そして、
「『暫く雪月を預かれ』って、信長様もかなりのマイペースだなぁもう」
取り敢えず隙あらば斬りかかってくる上司に何て言おう、と、佐助は言い訳を考えながら安土城へと向かったのだった。
そして安土城天主。
最愛の妹を膝の上に乗せる信長。
「...来たか、佐助」
天井に向かって呟けば、ほとんど物音をたてずに佐助が降りてきた。
「あ!」
「久しぶり、雪月ちゃん。元気そうで良かった」
事件の記憶はないと聞いていたので、それには絶対触れない。
「信長様、あんまりほいほい敵方の俺と連絡しないほうがいいと思いますが」
「仕方あるまい。ぽけもん関連のことなら貴様に任せるしかないのでな」
「謙信様にバレたら斬られます...俺が」
なんて軽口を叩きながらも、信長の脇に置かれた小さな風呂敷包に小さく目を見開く佐助。
「暫く預かれって、冗談じゃ無かったんですね」
「この状況で冗談を言う暇もあるまい...雪月、」
「あい」
「暫く、そこの佐助の元にいろ...俺や秀吉達は暫く忙しくなる、貴様の側に居られない時間が増える」
「ぅ...」
既に涙目の雪月。
それでも『嫌だ』とは言わないのは、我慢してるのか、それとも...
「すまんな雪月...だが、」
雪月を膝の上から降ろし、正面から向き合う。