第12章 ほーこく
「...貴様ら、」
しーずかーな声で信長が言った。
「...城内の人間に洗いざらい吐かせろ。疑わしき者は斬れ、報告はいらん」
「全力で、雪月を守れ」
「「「「「はっ」」」」」
それだけ。たったそれだけの命令だった。
だが、武将達は知っている。
目の前のこの魔王と恐れられる男がガチギレしていることを。
「...ところで信長様、雪月様は今、何方に預けられているのですか?」
三成が全員が思ってたことを尋ねた。『信用出来る人間』とは誰なのだろう?
「佐助だ。先日、春日山から呼び寄せた」
「信長様...」
光秀といい目の前の主君といい、何故こうも敵方とほいほい連絡をとるのか、秀吉は胃の辺りをさすった。
「目には目を、歯には歯を、ぽけもんにはぽけもんを、だ...それに、」
「今危険の多い安土よりかは、暫く専門家の下に預けるのも良かろう」
「...ん?」
「え?」
「はい?」
「あ?」
「...おや」
「「「「ええええええぇぇぇぇぇ?!?!」」」」
広間に武将達の絶叫が響き渡った。
「信長様、まさか雪月を春日山に行かせたのですか?!」
「そうだ」
「流石信長様」
「光秀、感心してる場合か!」
「貴様ら、何を驚いておる。雪月に危害が加えられた今、あやつをここに置くのも危険であろう...それに、事件のことをあやつが耳にする可能性もある」
「ですが信長様...」
「春日山の連中にも許可は取ってある。万が一、雪月を傷つければ即襲撃するともな」
「はぁ...」
ため息をつく秀吉。
まさか、ここまでやるとは。
自分の主君の破天荒ぶりと妹への溺愛度に秀吉は呆れ半分驚き半分であった。
(雪月、無事に帰ってこいよ...)
秀吉の願いは届くのか、それは神のみぞ知る。