第12章 ほーこく
「...捕らえた男についてですが、知らない若い男に頼まれた、その際、側に黒と赤の毛を持つ狐のような生き物を連れていたとのこと。男については顔を隠していたため詳細は不明だが、南蛮の衣装を纏っていたらしい。声からしてまだ若い、背丈は政宗とほぼ同じ位だ」
「黒と赤の毛を持つ狐?」
「あぁ、確かに言ってたな...ぽけもんじゃねぇかと思ったが、頼んで来た男は佐助じゃないらしいな」
「確かに、見たことのない生き物と言ったら佐助殿ですからね...」
「...じゃあまさか、佐助や雪月と同じ世界から来た人間が他にもいるってこと?」
「「「「?!」」」」
家康の意見に皆固まった。
「...俺はそう捉えている。現に、安土周辺で見たことのない生き物の目撃が相次いでいる」
「マジかよ」
光秀の報告が家康の意見を裏付けた。
「ぽけもんを連れていたとなると、また雪月が狙われる可能性が高いな」
「しかし、何故その男は雪月様のことを知っていたのでしょうか?」
「城内に勤めている人間には雪月の容姿については他言無用としてある筈だが」
「例外はいるがな」
(佐助のことかな?By家康)
何故雪月のことが外部に漏れたのか、討論する武将達。
「...まさか、内通者がいるとかか?」
「それも考えた。雪月を人質に、信長様辺りの首でも狙った大名でもいたのか...」
「...ねぇ」
何かを思い付いたらしい家康が真っ青な顔で言った。
「...雪月って、何かの実験体だったって佐助言ってたよね」
「?あぁ、確かに言ってたな」
「...じゃあ、雪月がその実験体だったってことを知ってる人間は?」
「「「「「?!?!」」」」」
「まだ実験途中だったのか、或いは何か重要な秘密でも握ったか...」
「厄介なことになったな...」
雪月の過去を知る者はここに居る武将達と佐助のみの筈。
しかし、雪月の過去に関わりのある人間だったら...?
ピシッ
不意に、何かにヒビが入る音がした。
武将達が音がした方向を見ると...
(あ、ヤバいな)
と思ったは誰だったか。
武将達の目線の先には無表情の信長。その手に握られている鉄扇にヒビが入っているのだ。