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ゆるやかな速度で

第5章 3.5.部室にて


「白石が…ナンパ…」
「いや、してへんからな!?」

俺が小春とユウジの方を見とると、目の前に座っとる小石川が唖然とした声音で喋るのが聞こえて前を向き直せば、驚愕した表情でこちらを見て固まっとったので突っ込みを入れたがあまり耳に入っていないようやった。
謙也は謙也で財前に何か他には見てへんのか!?と話しかけとるし、銀以外の人間が落ち着きを取り戻してくれず俺は困惑する。

別に【名前】をナンパしたつもりなんて微塵もなかったのに人によってはそう見えるんや…と正直驚いた。
彼女自身はあの時、俺が声をかけてどう思っただろうか?とふと思う。

最初はどうしてええか分からず困惑しとるようやった。
その後のメールの文面は無駄もなくシンプルな文章で『お願いします』だけやった。
先日家にお邪魔させてもらった時も感謝や謝罪はされても、完全な拒絶はされへんかった。
今日はそんなに話せてへんから分からへんが、テニス部に誘った時は嫌そうにしてへんかった。

迷惑がられとるわけやないんやろうか?と自惚れしてしまう。

そないな事を考えていたが、現実へと意識を戻したその瞬間、財前に詰め寄っとったはずの謙也と俺の目が合う。
あの表情は何か俺に聞こうとしてる時の目やと身構える。
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