• テキストサイズ

ゆるやかな速度で

第5章 3.5.部室にて


「てか、部誌に書く内容ないんやったら【名字】の事書けばええやろ。マネージャー誘っとったし」

謙也の発言により部室が静かになる。
何でそないな静かになるんや?と俺は辺りを見回した。

「ケンヤくん、流石にまだマネージャーになってへんのに書くこともないやろ」
「せやな」

謙也の言葉に対して本格的にマネージャーになったわけでもないのに書くこともないやろと小春とユウジが頷く。
確かにそこはまだ書かんでもええなと2人の意見を聞いて俺も思った。
やはり書く内容は遠山くんかなと思う。

あのテニスは凄かった。
最初は隣のコートからちら見しか出来へんかったけど、途中から見ただけでも圧倒的に魅了された。
誰もがあのテニスの内容に釘付けやった事やろう。

「てか朝も聞ぃたけど結局何で【名字】と仲ようなっとんのや?」

俺があの時の試合内容に思いを馳せていると謙也が俺にもっかい話しかけてきて現実に引き戻される。

「それは朝も言うたけどたまたま話す様になっただけやで」
「たまたま?先週ぐらいに部長、あの人のことナンパしてたっすよね?」

財前の台詞に俺を含めて驚きの悲鳴があがる。
俺まで驚いて声をあげたもんやから謙也が『てかなんで白石まで驚いてんねん!!』とすかさず突っ込む。
俺自身としてはナンパしたつもりなんて微塵もなかったから驚いただけなんやけどなと思った。

「いや、ナンパなんてしてへんからな?」
「せやけど図書室で話しかけとったやないですか。連絡先も交換してたし」
「なんや財前。いたんなら話しかけてや」
「いや…受付カウンターから話しかけれる距離やないですし」

財前の言葉に納得するしかないなと思った。
確かに受付カウンターから声あげて話しかける財前の姿は想像できへんからな。

「あぁ、それでか」
「ん?なんやユウジ?」
「綾子から先週ぐらいに白石の事を聞かれてな」
「あぁ、あったわね」

小春とユウジが納得がいったように互いを見て頷き合う。
綾子…?と思ったけど、そう言えば【名前】の友人の山下さんの名前がそれやったなと思い至る。
そして去年同じクラスやったから仲良うなったんや~と小春が話しとった事も思い出した。
小春が女子と仲良ぅなるのは割とよくある事やけど、ユウジも一緒には結構珍しい方なので驚いたな去年と俺は思い返した。
/ 166ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp