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ゆるやかな速度で

第5章 3.5.部室にて



「もしかして白石、お前――」

謙也が何かを言い掛けたその瞬間に部室の扉が勢いよくバタンッとおっきな音をたてて開かれる。
驚いて部室にいた全員が扉の方を向くと、そこには苦笑しながら立っとる千歳がいた。

「千歳?」
「あ!!!てか千歳、何処行っとんたんや!?」
「せや、そう言えばランニング行くって言ってから今まで姿見えへんかったな」

口々に言いたいことを言い、千歳に質問を投げると更にアハハと苦笑して頭をかきながら千歳が返答する。

「いやぁ…余りに天気良すぎて途中で昼寝しとったばい」
「千歳…お前なぁ…」

それに対して謙也が呆れ声をあげる。
せやけど俺も含めて、今日は色々とあったから全員千歳の事を忘れとった部分もあってあまり責められへんかった。

「まぁ、ちゃんと帰ってきたからええわ。部活終わっとるけど、どうする?」
「軽う打とうと思うとるとばってん……白石、時間ある?」
「構わへんよ」

俺は書きかけの部誌を閉じて椅子から立ち上がる。
続きは千歳との練習の後でやなと思った。

「俺らコートで暫く打ち合ってから帰るから鍵最後のやつは一旦コート来てな」

俺はそう言い残して部室を後にする。
謙也とかがさっきの話を続きをしたそうにしとる様な気もしたけど俺はわざと気付かへんふりをした。
千歳に感謝やなと内心思いながら、千歳と軽い会話をする。

――なんで【名字】の事、気にかけるん?

ふと…その時に、今朝の謙也の声が脳内に木霊する。
なんでやろうなぁ…と脳内で謙也の質問に返事をして、俺は苦笑しながらコートへと向かったのやった。


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