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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


「その…上手く文章にする自信がなくて」
「それでわざわざ電話してきてくれたん?」
「うん」

私がそう答えると『ありがとな』とお礼を言われてしまう。
お礼を言いたいのは私の方だと思った。

「そのね…私、頑張ってみようと思って」
「おん」
「白石くんとも学校で話してみたいし…その、他の人ともちゃんと話したいと思って…」

白石くんに思いの丈を話す。
ドキドキと心臓の音が煩かった。
少しの間の後で、電話の向こうから白石くんの優しい声が響いた。

「ええんとちゃう?応援するで」
「ありがとう」

私がお礼を言うと『まぁ俺に出来ることなんて限られてそうやけど』なんて苦笑しながら白石くんが告げる。
そんな事無いと告げてしまう事は簡単だった。
でも、私が既に何度か白石くんに救われている事を告げるのが何だか気恥ずかしくて直ぐに言えなかった。
言ってしまおうかと口を開いた瞬間に、白石くんの後ろから微かに声が聞こえてくる。
それに対して『今入るわ』と聞こえてくる。
多分声の主はご家族の誰かなのだろう。

ふと自室の時計を見れば時計の針が遅い時間を指していた。
いつの間にか結構話し込んでしまっていたのだなと気付かされる。
白石くんが『風呂入れって言われたからまたな』と言って電話を切ろうとするので私は慌ててお礼を言うとそこで電話は切れたのだった。
白石くんとの電話が終わってから私は先程自身で彼に宣言したことを思い出していた。
来週から頑張ろう。そう己に誓った。

それなのに今週ずっと朝は同じ事を繰り返す日々を送っていた。
何度も何度も今日こそは今日こそはと意気込んで登校したが意気地なしの私は毎日挨拶出来ずに不発に終わる日々だった。
今日も震える手で自分から教室の扉を開けようとしてもうまく力が入らない。

意気地なしと何度も自分をなじる。
ほんの少しだけ白石くんから貰った勇気を出そうと意気込んでみても結局はいつもの日常に埋もれてしまおうという臆病な私が顔を出す。
本当に嫌になる。

「無理せんで、ええんちゃう?」

そんな事を考えていると、綾子ちゃんの声が私に優しく降り注ぎ、驚いて振り返る。
振り返るとそこには私を慰める様に微笑んでいる綾子ちゃんがいた。
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