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ゆるやかな速度で

第12章 10.休暇


「駆け足で色々と連れまわして堪忍な。休みも明けたら、もう全国大会へ向けて色々とあると思うてな。その前に、【名前】に色んな場所を案内したかったんよ」

そう言って白石くんが苦笑する。

「ううん。私の話を聞いたから…だよね?」
「あはは。ばれてもうたか。恩着せがましいとは思ったんやけどな。折角やし俺らが普段過ごしてる場所を見てもらいたかったし、それにどうせなら大阪の街を好きになってもらえたら…なんてな」

白石くんはそう言って更に照れくさそうに苦笑を深める。
私が無趣味なのかもと茶化し気味に言ったこともこうして真剣に受け止めてくれた事だけでも有難いのに、こうして私の為にとしてくれたことに私は胸がいっぱいになる。

「白石くん、本当にありがとう。真剣に話を受け止めてくれただけでも有難いのに…」
「そんなに気にせんといてや。…なんか俺が柄にもなく、【名前】の力になりたい思うただけなんよ。あんま…参考にはならへんかもやけど」
「そんなことないよ。綾子ちゃんとも出かけたりする場所にも行ったけど、白石くんはまた違った視点で話してくれて本当に面白かったって思ってるの。本当にありがとう」
「なら良かったわ」

私の言葉に白石くんが嬉しそうに微笑む。
やっぱりその微笑み方が綺麗で私は相変わらず彼の優し気な眼差しにドキッとしてしまう。
そんな私の戸惑いもよそに白石くんは『少しだけええ?』といい、ベンチから立ち上がり近くの自動販売機へと駆けてゆく。
そして何かを購入してすぐさまベンチへと戻ってきてくれて、私に二つの缶を差し出してくれる。

「どっちがええとかある?」
「え!?あの、お金」
「ええって、だって付き合うてもろうたの俺やし。缶ジュースぐらい、大した額やないしな?」
「じゃ…じゃあ、お言葉に甘えて…」

私は差し出された缶がどちらも飲めたので何となく彼の右手にある方を受け取る。
私が缶ジュースを受け取ったのを確認してから白石くんはベンチへと再度座りなおし、缶を開けて飲み物を飲み始める。
私もそれにならう様に缶を開けて飲み物を飲み干していく。
思ったよりも喉が渇いていたようでゴクゴクと一気に飲み干してしまった。
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