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ゆるやかな速度で

第11章 9.合宿03


「やっぱ【名字】に任せて正解やな。ほれ、白石」

最後のノートを見終わった後でそう俺に声をかけてノートを俺に向けて軽く放り投げるから、俺は『危ないやないか!』とオサムちゃんに告げるが『白石なら取れるやろ』と、これまた悪びれもせずに言われるので、ほんましょうもない教師やとため息をつく。
もし俺がうまく取れずに【名前】の足とかに当たったらどないすんねんと心のなかで悪態をつきながら、オサムちゃんから渡されたノートを突き返すのもはばかられ、悪いとは思いつつもノートをぱらぱらと捲る。
ノートはここ最近のスコアブックをまとめる前段階のものだったようで、【名前】の普段は見れへん様な走り書きがたくさん綴られとった。

パラパラとノートのページを捲りながらが俺は一生懸命メモを取っている【名前】を思い出して自然と笑みがこぼれる。
真面目な彼女らしい文字で綴られたノートは、走り書きのメモページと綺麗に要点をまとめてあるページであふれとった。
ここ最近のスコアもちゃんと綴られとって彼女が他のメンバーの打ち合いなんかを見て感じたことがそのまま書かれとる。

「…せやな」

ノートをみながら俺はさっきのオサムちゃんの言葉に対して静かに返事を返すと、俺の言葉を聞いてからオサムちゃんがポツポツと話し始めたのやった。

「正直、教師がこないな事を言うのもどうかと思うけどな…白石から【名字】の話を聞いた時は無理かと思ったわ」

オサムちゃんの苦笑した声音と話の内容に驚いてもうて俺は『え』と小さく声を上げ、手元のノートから視線をオサムちゃんへと移す。
俺の視線の先におるオサムちゃんは、ただただ苦笑しとっただけやった。

「別に【名字】の事を悪いなんて思っとらんで?でもあれだけの実生活からの拒絶やからな…正直マネージャー業は無理かと思ったわ」

そう言ってオサムちゃんが普段からは想像がつかない程に真面目な口調で話し始める。
その言葉に俺は何1つ口を挟めずにただ静かに聞いとる事しか出来へんかった。
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