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ゆるやかな速度で

第11章 9.合宿03


「お前らぐらいの年頃ってなんちゅーか、いい意味でも悪い意味でも小さな世界で生きとるやろ?それがうまく作用する時もあれば、そうでもない時もあると思うわ。【名字】の事は小学校の教師から話は聞いとって知っとったからこそ正直無理やと思ったわ」

小学校の教師と中学の教師ってそういう情報交換的な事をするのかと驚きつつも、【名前】の今までの実生活を考えるとそれもそうかと納得するしかなかった。
本当は私立の女子校とかに通うちゅー手もあったと思う。
それでもそないな事をせずに、あれだけ怯えながらも生活しとったのはきっと彼女なりの考えがあったんやと思うと何とも言えへん気持ちになる。
俺が黙ったままでおるとオサムちゃんが言葉を続けた。

「でもお前らとおる時の【名字】、自然な感じに笑えとると俺は思うで?」
「……そうだとええな」

ほんまは無理して俺のあの時のわがままを聞いてくれとるだけで無理しとるんやないかとも思っとった。
でも、オサムちゃんの言葉を聞いてそうだとええと素直に思えた。
そして俺は【名前】がテニス部に来てくれてからの事を思い出しとった。
まだ少しの時間しか一緒に過ごせとらんけど、慣れない環境でも変わろうと一生懸命に自分に出来る事をやろうと必死な姿がすぐに思い出せた。
初めてのことやし、そもそも異性が苦手なのに男子テニス部という異性しかおらん場所で頑張る姿はほんまにええなと思っとった。
がんばり屋の彼女の姿を思い出し俺の口元が緩む。
このままやと締まりのない顔になってまうなと咳払いでもしよ思うたらふとオサムちゃんと目が合う。

「はぁ~。なるほどな、いやー、青いな。なんかこう体がムズムズしてきたわ」

俺と目が合うたオサムちゃんがニヤニヤと顔をにやけさせながらそう告げる。
わざとらしく体を掻いてみせる仕草に若干の苛立ちを覚えなくもないなと思いながら俺は少しだけ白けた表情を向ける。
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