• テキストサイズ

ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「置いて行けへんから…悪いけどおぶってくな?悪いけど財前、ちょい手伝ってや」

この場に置いていけないという判断をした白石くんの事は理解出来たし私もわかったけれども、流石におんぶされるとは思っていなかったので私は慌てて白石くんを止めに入る。

「さすがにそれは…悪いし、重たいと思うから」
「【名前】。財前に手伝ってもらって俺の背におぶられるのと、俺に今ここでお姫様抱っこで運ばれるのどっち選ぶ?」
「どっちもなしは…」
「なしやで?」

流石にそこまでしてもらうのは悪いと思い慌てて止に入ってみたけれども、有無を言わさない雰囲気をまとった白石くんに圧倒されてしまう。
それは財前くんも金太郎くんもだったようで私が助けを求める様に2人へ視線を泳がせてみれば、白石くんを見て少し震えている金太郎くんと、私からわざと視線を外す財前くんが目に入る。
きっとこの場で今の私に助け舟を出してくれる人はいないのだろうと2人を見て悟る。

そして私は白石くんにおんぶされるのとお姫様抱っこされる事のどちらかを選択しなければいけない状況に頭を悩ませた。
正直どちらも恥ずかしさと申し訳なさで遠慮したい気持ちでいっぱいだった。
でもどちらかを選ばなければいけないのだろう。
いつまでもここにいるわけにもいかないのだから…と私は意を決して白石くんに選択したほうを述べる。

「おぶられる方でお願いします」

お姫様抱っこの方が圧倒的に恥ずかしさと申し訳無さでいっぱいになることが予想出来た結果の選択だった。
私がそう告げると白石くんは私をおぶさる為の準備としてその場にしゃがみ込み、顔だけ私の方へと向ける。

「落ちないようにしっかり捕まってな?」

その言葉でもう後戻りは出来ないのだとわかり私はゆっくりと白石くんに近づく。
彼の背に乗ろうとした時に上手く怪我した足のままでは彼の背におぶさる事が出来なかったので、それに気付いた財前くんがソッと私の足を持って、ヒョイッと持ち上げてくれる。

「財前くんありがとう」

手伝ってくれた彼にお礼を告げると小さな声で『…まぁ、しゃーないっすから』とだけ彼は告げた。
少し無愛想な彼だけれどもこうした事を自然とやってくれるのだから、少しだけぶっきらぼうなだけで良い人なのだろうと思った。

「遠慮せんで落ちないようにちゃんと捕まってな」
「……はい」
/ 166ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp