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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「これ腫れとるかもしれへんな…」
「【名前】…ほんますまん」

白石くんの言葉に金太郎くんが半泣きな表情で私に謝罪をする。
本当は大丈夫だよと優しく彼に言葉をかけてあげたいのだけれども、今の私は先程の痛みで上手く言葉が発せないでいた。
それでも金太郎くんを安心させてあげたくて、私の近くまで来てくれた彼の頭を優しく撫でる。
それに最初は驚いた金太郎くんだったけれども私を見上げてくれた時にニッコリと微笑むと何処か安心してくれた様で、その表情を見て私も安堵したのだった。

「【名前】、あるけへんやろ…これ」
「だ…大丈夫。その、ここで少し休んでから歩けば多分。その、皆は先に行ってて大丈夫だから」

私が正直な気持ちを白石くんに告げると、白石くんは怒った表情をして私に『アホ』と告げる。
今までそんな事を彼に言われた事がなかったので私は驚いてしまう。
けれどそれは私だけじゃなかった様で財前くんも金太郎くんも驚いた表情で白石くんを見ていた。

「こんな暗いとこに1人置いていけるかいな!なんで頼ってくれへんのや」

白石くんの怒りを孕んだ声音に驚いてしまう。
そして彼の言葉で先日小春くんに言われた言葉を思い出す。
『少しは人を頼るのも悪いことではないんやで?』
小春くんの言葉の意味が今、やっと私は分かった。

私の1人でなんでもやろうとする姿が時には相手を傷つけてしまうことを。
きっと小春くんは頭が良いからいつかこうなる事を分かっての発言だったのだろう。
白石くんを見れば彼が悲しそうな瞳で私を見ていた。
先程までの怒っている声音とは逆で表情は悲しそうで、私の発言は人を突き放すものだったと実感したのだった。

「ごめんなさい」
「…すまん、俺も強く言い過ぎたわ」

白石くんの言葉を聞いて私は左右に顔をふる。
彼は悪くないのだから。
私が相手の事を考えていない発言だったのだから。

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